第3回

発光ダイオードの動作原理

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発光ダイオードの動作原理

電気エネルギーを光エネルギーに変える電−光交換はその機構から、温度輻射、およびルミネセンスの2種類に大別されます。ルミネセンスには光による励起に伴うフォト・ルミネセンス、X線や電子線の照射によって生じるカソード・ルミネセンス、電流注入によって生じるエレクトロ・ルミネッセンス(EL)などがあり、発光ダイオードはエレクトロ・ルミネッセンスの一種です。これら電−光変換の中でエレクトロ・ルミネッセンスだけが直接変換で、その中でもIII-V族化合物半導体を用いた発光ダイオードが実用化されています。

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特長

  1. 1発光効率が高く、低電流で高出力が得られる。
  2. 2応答速度が速く、パルス動作、高周波による変調が可能。
  3. 3光出力を電流制御で容易に変えることが可能。
  4. 4直流、交流、パルスのいずれも動作可能。
  5. 5小型軽量かつ長寿命。
  6. 6消費電力が少ない。
特に当社は光センサー機器への応用に向けて、開発当初より、赤外発光ダイオードに着目してきました。前述の特長はもとより、シリコンデバイスとの波長感度特性に優れ、より高出力が得られます。

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動作原理

PN接合のエネルギーバンド図を示します。(図1(a))この図は熱平衡状態のもので、N側からP側へはポテンシャル障壁があるため、接合を通しての電荷移動は起こりません。
今、外部からPN接合に順バイアスをかけるとポテンシャル障壁が減少し、(図1(b))に示すように伝導帯の中で電子がN側からP側に流れ、価電子帯の中では反対方向に正孔が流れます。これが少数キャリアの注入です。少数キャリアの注入が起こると、熱平衡状態よりも余分の少数キャリアが存在することになり、高エネルギー状態にあって不安定なため、比較的短い時間内に空乏層近傍で価電子帯に落ちてエネルギーを失い消滅します。この再結合の際、失われたエネルギーの一部として光が外部に放出されます。
図1.発光ダイオードのエネルギーバンドと断面図
半導体結晶は、その電子の取りうるエネルギーが運動量によって異なり、直接遷移形と間接遷移形の2つのタイプに分類されます。両者のエネルギーバンド構造と光量子(フォトン)の放出過程を図2に示します。
図2.半導体の発光機構
直接遷移型(図2(a))では伝導帯の谷に存在する電子が価電子帯の正孔と再結合してエネルギーを失う時、運動量の変化がないため失われたエネルギーは光になります。この現象は発光再結合と呼ばれます。GaAsやそれにAlAsを一部入れたGaAlAsなどは直接遷移型で、光の放出確率が高く、高い量子効率を持っています。一方、間接遷移型(図2(b))では運動量の変化、すなわち格子振動を伴います。このため運動量の変化を伴わない発光過程と格子振動が同時に生じるため、発光再結合が生じる確率は非常に小さくなります。この非発光因子に電子が再結合することを非発光再結合と呼びます。Si、Ge、GaPは、このような間接遷移を行うことが知られています。
再結合の際、エネルギーと発光波長は次の関係にあります。

E= h*v = h* c/λ (h:プランク定数 ν:振動数 c:光速 λ:波長)

λ[nm]=1240/E(eV)  となります。

発光再結合におけるEは、およそその半導体の禁止帯幅Egとなります。GaAsは禁止帯幅Egが1.42e(873nm)ですから、赤外発光に適した結晶です。
またGaAlAsは一般にGa1-xAlxAsのx値を変えることにより、EgがGaAsより大きくでき、赤外から赤色発光まで広範囲に波長を変えることが可能になります。

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発光ダイオードの代表特性

(1)V-I特性

発光ダイオードのV-I特性は一般のダイオードと同じ特性を示します。順方向にある電圧以上を加えない限り発光せず、赤外発光ダイオード(GaAs)で1.3V程度です。(図3)
図3.V-I特性

(2)発光出力−順電流特性

発光ダイオードから放射される光エネルギーのうち、光軸方向に出るエネルギーを発光出力(Po)といいます。
発光出力は順電流にほぼ比例しますが、順電流の最大定格値付近では熱損失のため発光出力の直線性が失われます。(図4)
図4.発光出力−順電流特性

(3)指向特性

発光ダイオードは一般にそのパッケージにより光軸方向に出力のピークがあり、光軸からの角度に応じて出力は減少します。
ピーク値の50%になる角度を半値角(半値全角:(半値全角:2θ1/21/2)で示します。
図5.指向特性

(4)ピーク発光波長

ピーク発光波長は発光ダイオードに用いる材料により決まります。III-V半導体では、主としてGaAs、AlGaAsを使用しております。このうち、AlとGaの混晶比により発光波長を制御することが可能となります。
図6.発光スペクトル

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形状

LEDはそのパッケージの方法により、特性が大きく変わりますので、用途に合ったLEDを選ぶ必要があります。
図7(a)のLEDは樹脂成形品ですが、その構造から指向性が大変鋭くなっています。その反面、到達距離が長くなるという特長を持っていますので、光リモコン用発光素子として最適です。図7(b)のハーメチックタイプのLEDは屋外使用等、厳しい条件下でも使用できるよう、信頼性が高められています。また、このタイプは発光窓にガラスレンズを使用し、鋭い指向性の高出力発光が可能になっています。図7(c)のLEDは薄型立形状の樹脂タイプです。このタイプは受光と対向させるインタラプタなどにもっとも適しています。いずれのタイプも、これら形状による特性を持ち、発光波長では、可視、近赤外といった特性とあわせて、様々な特性のLEDが取り揃えられています。

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図7.実装形状